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Lee-Byung-hun addicted

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第19話 2006/12/27

『I'll dream of you again』 scene19

「ねえ、看護士さんとか来たらやっぱりまずいからさ・・・」
そういって起き上がろうとする揺を腕をビョンホンはそっと掴んだ。

「いいから。絶対に入ってこないから。揺はここで寝るの。」
そういうと彼は彼女の髪をなでた。

「何で絶対にはいってこないのよ。」
「だって張り紙したもん。『Don’t disturb』って」
ビョンホンはそういうとニヤッと笑った。

「えっ、いつの間に?」驚く揺。
「君がシャワー浴びてる間に」
「しかし・・今時の病院はホテル並みよね。シャワーまでついてるなんて。おまけに付き添いように3ベッド用意されてるなんてね。驚きよ。」
「ベッドなんかひとつでいいのに。俺たちには無駄だな。」
そういうと彼は揺に優しくキスをする。髪に額に頬に首に・・そして唇に。彼女のすべてを愛おしむように。

「ビョンホンssi・・・やっぱり何か違う。何隠してるの?」
揺がビョンホンの目をじっと見て訊ねた。
「何にも。君が言ったんだろ。僕がいつも違うって。優しかったり激しかったり。
で・・どっちも好きだって。
今日の僕はどっちなのか・・あとでちゃんとレポート書いて。」

ビョンホンはそうささやくように言うとまた彼女を愛し始めた。
(揺がいなくなったら・・・俺はもう俺でいられない・・。このサラサラの髪もこの大きな目もこの低い鼻も・・・・もう今は俺の身体の一部なのだから。絶対に逝かせない。逝かせてたまるか・・・。)
ビョンホンは彼女のすべてを慈しみながらそう心に誓った。


次の日の朝。
部屋に運ばれてきた朝食はホテルのルームサービスのような充実振りだった。
「あ~食べた食べた。結構美味しかったね。」
「ねぇ。今日帰るのよね。」
揺は食後のコーヒーを飲みながらちょっと寂しそうに言った。
「うん。。。その予定。でも、夜遅くで大丈夫だから。」
「そう。しかし、何時までここにいればいいのかしら。
今日は検査結果聞いて帰るだけって言ってたわよね。
夕べだって別にここに泊まらなくて良かったんじゃないのかな。」

「まあ、いいじゃん。病院のベッドっていうのもなかなかスリリングでよかったよ。」
「やだ。ビョンホンssiったら。」
揺は呆れたように言った。

「ルルルルルル・・」
内線電話が鳴った。
「もしもし、揺か?」
「あ、晋さん、今噂してたの。ねえ、いつになったら帰っていいの?」
「昨日の検査結果がもうすぐ戻ってくるから。11時から結果診断する。
二人一緒にしてやるよ。・・・そうだ。お前・・・また検査するかもしれないから今のうちに食いたいもの食っとけ。
あ・・昼間っからあいつだけは食うなよ。じゃあな。」

晋作はそう一方的にまくし立てるとさっさと電話を切った。
「どうしたの?」
心配そうなビョンホン。
「ん?11時から検査の結果教えてくれるって。それから・・・」
「ん?」
「私はまた検査かもしれないから今のうちに食べたいもの食べとけって。あなた以外」
「俺以外?」
「そんなこと言われたら・・・あなたのこと食べたくなっちゃった・・」
揺はそういうとビョンホンをベッドに押し倒した。


「美味しいわ・・・これ」
揺はベッドに座りながら昨日もらったおにぎりをぱくついていた。
「しかし・・すごい食欲だな・・・まるで・・グエムルみたいだ・・」
ビョンホンはそういうとゲラゲラと笑った。
「そうそう。あなたも頭から飲み込まれないように気をつけた方がいいわよ」
揺はそういうとケラケラと笑った。
「ゴハッ」
「揺、大丈夫かよ」
喉にごはんをつまらせて咳き込んだ揺にビョンホンがお茶を差し出した。
「あ・・ありがと。しかし・・何の検査かしら・・」
ビョンホンはそれに答えることなく彼女の口の脇についたご飯粒をとるとそっと自分の口に運んだ。



11時。ビョンホンと揺が連れ立ってカンファレンス室に降りていくと入り口に綾が立っていた。
「あれ、お母さんどうしたの?」
「ん?ビョンホン君に会いに」
綾はそういうとビョンホンに目をやった。
ビョンホンは綾が揺の病気のことで呼ばれたのだということを悟った。
「綾さん・・・ありがとうございます」
ビョンホンは一言そう言った。

部屋に入ると晋作と晋作の叔父であるこの病院の院長の佐々木が既に席についていた。
「どうぞ。昨日は検査お疲れ様でした。どうぞおかけください。」
佐々木院長は明るい表情でそういった。
「では、早速。まずイ・ビョンホンさんの検査結果ですが極めて健康ですね。心配されていた空咳は一種のくせのようなものですが・・タバコの吸いすぎは肺にも喉にもいいことはありませんので・・この際ですから禁煙されることをお勧めします。
これからも健康で是非いい作品をお待ちしてますよ。
あ、私「甘い人生」好きなんです。
こいつ勧められてみたんですが・・・」
「おじきっ!いいから」
晋作はばつが悪そうに佐々木の袖を引っ張った。
「ああ、、失敬。」
そんな二人を見て笑っていたのは揺だけだった。
「では・・・橘揺さん。あなたの検査結果ですが。
はっきり申し上げて問題がありました。
ですので本日はお母様もお呼びしたわけです。
ただ・・至って早期の発見ですので・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
彼女の病状と今後の治療方法について細かい点までしっかりと説明する佐々木の声を長い間皆はじっと黙って聞いていた。

「お母さん、ありがとう。助かったわ。来てくれて。
私ね。実は途中からあんなに丁寧に説明してもらったのに何言われてるのかわからなくなっちゃって・・・
あ。でも大丈夫よ。元気だから。
心配かけてゴメンネ。お父さんにも心配要らないって言っておいてね。
意外に子煩悩だから心配しそうよね。」
揺はそう明るく言うとケラケラと笑った。

「揺・・・また来るから。明日から検査入院でしょ。無理しちゃだめよ。あと・・赤ちゃんは・・またいつか会えるから。」
綾はそういうと揺をそっと抱いた。

「ん。ん。わかってる。大丈夫だから。ありがとう。ほら。タクシー待ってるから。」
揺はそういうと綾の背中を押した。
「うん。じゃ。行くね。」
綾はそっと微笑んでそう答えた。
「揺、お母さん下まで送ってくるよ」とビョンホン。
「うん。お願い」
揺は明るく答えた。
「ビョンホン君・・・あなたも忙しいのにごめんなさいね。こんなことになっちゃって。
あの子のことは私たちで面倒みるからあなたは仕事に戻った方がいいわ。
先生はああ、おっしゃってたけど5年生存率が10~20%ってほとんど助からない・・・」

「お母さん、僕のことを心配してくださる気持ちは嬉しいですがそんな心配は無用です。
仕事は何とでもなりますから。
お母さん、彼女はきっと助かります。これは奇跡なんですよ。
先生もおっしゃってたでしょ。」
ビョンホンはそういうと泣いている綾の肩をそっと抱いた。

「僕がついてますから揺は僕が支えますから絶対大丈夫です。」
ビョンホンは自分に言い聞かせるようにそうつぶやいた。

ビョンホンが病室に戻ると揺の姿はなかった。
彼は少し考えこむと確信したように屋上に向かった。
そこにはベンチに座って空を見上げる揺の姿があった。

「風邪ひくよ」
ビョンホンはそう言って彼女に近づくと病室から持ってきたチェックのブランケットを彼女の肩にかけた。
「あ・・よくここがわかったわね。」
「長年の勘ってやつさ。きっと光合成してるってピンときた。」
ビョンホンはそういうと眩しそうに冬の真っ青な空を見上げた。

「良かったわね。健康で。タバコの吸いすぎには注意しましょう。」
揺はそういうとケラケラと笑った。

「ああ。長生きしてお前の面倒見ないといけないからな。禁煙するさ」
ビョンホンはそう憎まれ口をたたくと揺の顔を横目で見た。

揺の表情は・・・・・そうだあのときの顔だ。
ビョンホンは思い出していた。犬小屋の前でスエと抱き合っているのを揺が見たときこんな顔をしていた。
怒っているのか悲しんでいるのかわからない顔・・涙が出ていないのに泣いている顔・・・・。

「長生きしてくれても・・・・私はいないかもしれない。
あなたを・・一人残していってしまうかもしれない・・・それだったら私の命をこの子にあげられないかしら。
この子は私のお腹に入ったばっかりにこんな青い空も見ることもできないし、あんなに美味しいおにぎりを食べることも出来ない・・・長く生きられない私のために犠牲になるなんて・・」

揺はそういうと黙ってうつむいた。
「揺。誰が長く生きられないって言ったの。
先生だって言ってただろ。奇跡的な早期発見だって。
晋作さんが昨日俺に話してくれたんだ。お前の病気のこと。
聞いてから俺はずっとどうやってお前をなだめようか考えてた。
きっと可愛い息子のために自分の命を諦めようって言い出すに違いないお前になんて言おうか。
昨日からずっと考えてたんだ。」

「ビョンホンssi・・・・」

「揺。聞いて。これは神様と俺たちの可愛い息子がプレゼントしてくれたチャンスなんだよ。
いいかい。この子は君を救うためにこの世に生まれてきたんだ。
そう。たとえ生まれ出ることがなくたって僕と君の息子はもうここで生きている。
勇気溢れる俺の立派な息子は大好きなお母さんを救ったんだ。」
ビョンホンはそういうと揺のお腹にそっと顔を近づけた。

「ホン・・・よくやった。えらいぞ。お前がいたおかげでお母さんは病気が早く見つかって長い命を神様にもらえることになった。
お前はまた神様の元に帰ることになってしまうけどお前は立派だから神様が必ずまた父さんと母さんのところにすぐに帰してくれる・・
父さんはそう信じてるんだ。
待ってるから早く帰って来いよ。
青い空を一緒に見て母さんが作った美味しいおにぎりを一緒に食べるんだから。
そうだ・・・ほら、りんごだって・・3つもらったんだ。」

ビョンホンはそういうとポケットから夕べ老婆にもらったりんごを三つ取り出した。

「ひとつは父さんの分、ひとつはお前の分、もうひとつは大切なお前の母さんの分なんだ」

そういうとビョンホンは揺の膝の上にりんごを並べた。

お腹に近づけた彼の頬にりんごの上に揺の涙がポタポタと流れ落ちる。

「ビョンホンssi・・・この子に甘えてもいいのかな・・助けてもらっていいのかな。やっぱりね・・私・・あなたと生きたい・・・・・。」

揺の目から堰を切ったように涙が溢れ出した。
ビョンホンはそんな揺をしっかりと抱きしめる。

「お前が長生きしないとホンと俺の食べるおにぎりを握ってくれる人がいないじゃないか」

「ホン?」揺は涙を拭きながら聞き返した。

「そう。こいつの名前は「ホン」。
憲と書いて「ホン」と読む。
俺の大切な自慢の息子だから俺の一字を取ってつけた。」

ビョンホンはそういうと自慢げに笑った。
「もしかしたら女の子かもしれないわ。」

「いや、まちがいなく男だ。女は男が守るというのがイ家の伝統だから。
お前を守るのは俺の息子のイ・ホンだ。」

揺は明るくそう話すビョンホンの言葉に希望の光を感じた。
(きっと私は生きられる・・・そしてまたホンに会うことが出来る・・・彼がいれば頑張れる・・)

そんな彼女の涙を彼の温かい手が拭った。そして優しくキスをする。
ビョンホンは彼女と共に大切な息子をぎゅっと抱きしめた。

「ほら、お前の分だ。」
ビョンホンはそういうと揺の口元にりんごを差し出した。

「ありがとう・・ビョンホンssi・・・」
揺は一口かじった。
そしてビョンホンも一口かじる。

「しょっぱいよ・・・揺」
彼の目からもいつの間にか涙があふれていた。



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